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【後編】令和8年度の都道府県別最低賃金はどうなる?東京・神奈川や各ランクの見通し

【後編】令和8年度の都道府県別最低賃金はどうなる?東京・神奈川や各ランクの見通し



令和8年度最低賃金改定の結論

令和8年度の最低賃金改定は、昨年度とは異なり、中央最低賃金審議会が示した目安額と同額、または若干上回る水準で決定される都道府県が多くなると見込まれます。

このうち、東京都と神奈川県については、全国加重平均への影響、地域間格差の解消や過去の最低賃金改定の運用を踏まえると、中央最低賃金審議会が示した目安額どおり、54円の引上げとなる見込みです。
また、Aランク及びBランクの都道府県についても、昨年度のような目安額を大きく上回る引上げは行われにくく、目安額又は目安額に1~2円程度を上乗せした水準で決定される都道府県が多くなると見込まれます。

一方、Cランクの都道府県については、地方自治体の取組や地域事情によって、目安額を上回る引上げが行われる可能性は否定できず、予測しづらい面があります。

本記事では、令和8年度の都道府県別最低賃金の見通しについて、東京都・神奈川県の過去の経緯や、各ランクの地方最低賃金審議会における審議のポイントを踏まえて解説します。

 


3 令和8年度の都道府県別最低賃金はどうなる?

本稿を執筆している令和8年8月1日時点では、令和8年度の最低賃金額について結審した地方最低賃金審議会はありません。今後、各都道府県の地方最低賃金審議会において金額審議が行われ、答申を経て、都道府県労働局長により最低賃金額と発効日が決定されます。

ただし、現時点でも、東京都と神奈川県については、中央最低賃金審議会が示した目安額と同額で決定されると見込んでいます。

 


東京都の最低賃金は目安額どおり54円引上げとなる見込み

東京都については、中央最低賃金審議会が示した目安額どおり、54円の引上げとなることが見込まれます。その大きな理由の一つは、最低賃金の全国平均には、単純平均ではなく「全国加重平均」が用いられているためです。

全国加重平均とは、各都道府県の最低賃金額を単純に平均するものではなく、地域ごとの最低賃金の適用を受ける労働者数などを反映して算出されるものです。

東京都は、最低賃金の適用を受ける労働者数が全国で最も多い地域です。そのため、東京都の最低賃金額が目安額から1円変動するだけでも、全国加重平均に大きな影響を与えます。

私が最低賃金を担当していた当時に試算したところ、東京都の最低賃金を1円引き上げた場合の全国加重平均への影響は、沖縄県の最低賃金を約30円引き上げた場合に相当するという結果になりました。

このように、東京都の最低賃金額は全国加重平均への影響が極めて大きいため、これまで中央最低賃金審議会が示した目安額を基本として決定されてきました。

また、地域間格差の解消を図るために、本年度は、B、Cランクの目安額をAランクより高くしているわけですから、最も高い東京都において目安額を上回る引上げを行うことは妥当ではありません。

これらの事情により、本年度においても目安額どおり54円の引上げとなることが見込まれます。

 


神奈川県の最低賃金も目安額どおり54円引上げとなる見込み

神奈川県についても、東京都と同様に、目安額どおり54円の引上げとなることが見込まれます。神奈川県の最低賃金額は、近年、東京都より1円低い水準で改定されてきました。

令和8年度に東京都が目安額どおり54円引き上げられた場合、目安額を下回る額での決定や東京都と同額以上とする決定を選択する余地はないため、目安額どおりの引上げとなることが見込まれます。

なお、東京都と神奈川県の最低賃金額が同額となった例もあります。

平成20年度には、最低賃金法改正により、最低賃金額と生活保護水準との乖離解消が重要な課題となりました。

当時、全国で最も乖離が大きかった神奈川県では、その解消のため大幅な引上げが行われ、その結果、東京都と神奈川県の最低賃金額はともに766円となりました。当時、神奈川労働局に勤務していましたが、神奈川県の最低賃金が東京都と同額になったことについては、神奈川労働局や審議会関係者の間で「東京都と同額であることは適当ではない」という認識が共有されていた記憶があります。

その後は、東京都の最低賃金額を上回らない形で改定が行われ、近年は東京都より1円低い水準が維持されています。

なお、神奈川県で目安額を下回る額での決定は平成27年度に一度だけあります。

当時の箱根山の火山活動による地域経済への影響を踏まえて異例の決定がされていますが、本年度においてはそのような特別な事情は存在していませんので、目安額を下回る理由は見当たりません。

このように、目安額を下回る決定は極めて例外的な事情がある場合に限られます。したがいまして、神奈川県でも目安額どおりの引上げとなることが見込まれます。

 


Aランク・Bランクの最低賃金は目安額を基本に決定される見込み

Aランク及びBランクの都道府県については、昨年度のような目安額を大きく上回る引上げは行われにくく、目安額又は目安額に1~2円程度を上乗せした水準で決定される都道府県が多くなると考えられます。実際に、Bランクについては、福島県と群馬県などを除き、多くは昨年度でも目安額又は目安額に1~2円を上乗せした水準で決定されています。

また、最低賃金額の決定に当たっては、本来、すべての都道府県に共通して、最低賃金法に定められた法定三要素、

🚕地域における労働者の生計費 
🚕労働者の賃金 
🚕通常の事業の賃金支払能力 

を総合的に考慮する必要があります。

令和8年度の全員協議会報告でも、改めて法定三要素のデータを総合的に考慮して最低賃金額を決定すべきであることが示されています。

各都道府県に関する法定三要素のデータは中央最低賃金審議会でも資料として提示されており、これらを総合的に考慮して、ランクごとの目安額が提示されています。
このことからすれば、地方最低賃金審議会の審議において、大幅な最低賃金の引上げを合理的に説明できるような新たなデータの提示がなされる可能性は乏しく、法定三要素を総合考慮して大幅な引上げが行われることはないと見込まれます。

 


Cランクの最低賃金は地域事情によって上振れする可能性も

一方、Cランクの都道府県については、これまでに述べてきた法定三要素以外の事情により、目安額を上回る引上げが行われる可能性があります。

最低賃金額が相対的に低い地方自治体では、首長による最低賃金引上げへの強い要請や、賃上げ・生産性向上を支援する独自施策などが示されることが昨年度も一定程度見受けられました。

地方では、使用者団体や地域企業が、自治体と産業振興や雇用対策について継続的な関係を持っている場合があります。

また、自治体首長が強く最低賃金引上げを求め、自治体として独自に事業者支援策を併せて示すといった事情が重なった場合には、使用者側委員においても、地域経済への影響や自治体による事業者支援策の効果などを総合的に考慮した上で、結果として目安額を上回る大幅な引上げにつながる可能性は本年度も否定できません。

この点は現時点では予測しづらく、今後の地方自治体の動きを注視することが重要になります。


令和8年度最低賃金改定に関するQ&A

Q1 令和8年度の最低賃金はいつから変わりますか?

令和6年度はすべての都道府県で10月中に発効しています。それ以前も同様のスケジュールで推移しており、令和8年度についても、法定発効方式により10月1日頃を目安として、多くの都道府県で10月中に発効する従来のスケジュールに戻ることが見込まれます。

Q2 中央最低賃金審議会の目安額どおりに決まりますか?

令和8年度については、全員協議会報告の内容を踏まえ、目安額又は若干上乗せ程度で決定される都道府県が多くなると考えられます。

Q3 東京都の最低賃金はいくら上がりますか?

東京都については、目安額どおり54円引上げとなることが見込まれます。


Q4 タクシー業界への影響はありますか?

タクシー業は人件費の占める割合が高い典型的な労働集約型業種であるため、最低賃金引上げによる影響を相当程度受けやすい業種です。この点は今後別コラムにて分析していきます。

 


まとめ

令和8年度の最低賃金改定では、中央最低賃金審議会からAランク54円、B・Cランク56円の引上げ額の目安が示されました。東京都・神奈川県については、全国加重平均への影響や過去の改定経緯から、目安額どおりの引上げとなることが見込まれます。

また、Aランク及びBランクでは目安額を基本とした決定が多くなる一方、Cランクでは地域事情によって目安額を上回る引上げが行われる可能性があります。

今後は、各地方最低賃金審議会の審議状況を確認しながら、都道府県ごとの改定額や背景について分析していきます。

 


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参考資料

厚生労働省
「令和7年度地域別最低賃金の審議結果(最低賃金額一覧)」

※令和7年度の都道府県別最低賃金額、引上げ額及び発効日については、厚生労働省資料を参考にしています。

 


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執筆者

執筆者:久富 康生
(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会 常務理事・元長野労働局長)

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