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2026年度最低賃金改定はどうなる?最新動向と今後のスケジュールを解説

2026年度最低賃金改定はどうなる?最新動向と今後のスケジュールを解説





最低賃金は、毎年多くの労働者や企業に影響を与える重要な制度です。
2026年度も中央最低賃金審議会において地域別最低賃金の目安額に関する審議が進められており、今後は各地方最低賃金審議会で具体的な改定額について審議が行われます。

まず結論からお伝えします。なお、7月27日に開催される目安小委員会にて今年度の目安額が決定されることが見込まれます。


【結論】

現時点で公表されている政府方針や経済指標、中央最低賃金審議会の審議資料などを総合的に考慮すると、2026年度の地域別最低賃金は引き続き引き上げられる可能性が高いと考えられます。
一方で、昨年度(66円)のような全国的な大幅引上げとなる可能性は高くないものと考えられます。
また、地域間格差の是正が引き続き政策課題となっていることから、最低賃金額が比較的低い地域では、引上げ率が高くなる可能性があります。

その主な理由として、次の6点が挙げられます。

1. 政府が掲げる全国平均1,500円の達成時期が実質的に先送りされたこと政府が掲げる全国平均1,500円の達成時期が実質的に先送りされたこと
2. 消費者物価上昇率が昨年度より低下していること
3. 春闘における賃上げ率は引き続き高い水準を維持していること
4. 企業物価や原材料価格は依然として高い水準にあること
5. 中央最低賃金審議会全員協議会が地方最低賃金審議会に対し、地域の実情を踏まえた慎重な審議を求めていること
6. 地域間格差の是正が政府及び中央最低賃金審議会における重要な課題となっていること


このような状況を踏まえると、地方最低賃金審議会においても、中央最低賃金審議会が示す目安額から大きく乖離した改定額となる可能性は低いものと考えられます。
本記事では、最低賃金制度の基本的な仕組みや2026年度最低賃金改定のスケジュール、現時点で考えられる見通しについて分かりやすく解説します。

 


この記事で分かること

🚕最低賃金制度の基本的な仕組み
🚕2026年度最低賃金改定のスケジュール
🚕2026年度改定の注目ポイント
🚕現時点で考えられる改定の見通し
 


1 最低賃金制度の4つの特徴

最低賃金法には、次の4つの特徴があります。


① 2種類の最低賃金がある

最低賃金法には、

🚕地域別最低賃金
🚕特定最低賃金

の2種類があります。

地域別最低賃金は、都道府県ごとに定められており、原則としてその地域で働く全ての労働者に適用されます。
一方、特定最低賃金は、特定の産業について関係労使の申出に基づいて設定されるもので、地域別最低賃金より高い金額が定められています。

② 民事上・刑事上の双方の効力がある

最低賃金額に満たない内容の労働契約は、その部分について無効となり、最低賃金法により最低賃金額まで自動的に修正されます。また、地域別最低賃金額に満たない賃金を支払った使用者には、最低賃金法により50万円以下の罰金が科されることがあります。

このように最低賃金法は、労働契約を修正する民事上の効力と、使用者に罰則を科す刑事上の効力の双方を有しており、労働者の最低限の生活を支える重要な役割を果たしています。

③ 審議会方式により改定される

最低賃金の改定は、国が一方的に決定するのではなく、労使公益三者で構成される審議会で議論した上で決定されます。厚生労働省には中央最低賃金審議会が、各都道府県労働局には地方最低賃金審議会が設置されています。

地域別最低賃金については、まず厚生労働大臣の諮問を受けて中央最低賃金審議会で目安額が審議されます。
その後、各地方最低賃金審議会で地域の実情を踏まえて具体的な金額を審議し、都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定します。

また、特定最低賃金についても、地方最低賃金審議会で審議が行われます。

④ 目安制度が採用されている

地域別最低賃金の改定では、昭和53年から中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会へ改定額の目安を示す「目安制度」が採用されています。目安額は公益委員見解として示されますが、その内容を地方最低賃金審議会へ提示することについては、労働者側・使用者側双方の同意を得た上で厚生労働大臣へ答申されます。

つまり、労使双方が提示そのものに同意している以上、実務上は目安額について一定の合意が形成されていると考えることができます。
そのため、各地方最低賃金審議会では、目安額を基本としつつ、地域の賃金水準や物価、企業の支払能力などを踏まえて最終的な最低賃金額が決定されます。

 


2 地域別最低賃金改定のおおまかなスケジュール

地域別最低賃金は、おおむね次の流れで改定されます。

厚生労働大臣が中央最低賃金審議会へ諮問
   ↓
中央最低賃金審議会で目安額を審議
(目安に関する小委員会を含む)
   ↓
中央最低賃金審議会が目安を答申
   ↓
地方最低賃金審議会で改定額を審議
   ↓
都道府県労働局長が最低賃金額を決定
   ↓
10月上旬頃 改定後の地域別最低賃金が発効

2026年度のおおまかなスケジュールは次のとおりです。

 

時期 内容
6月26日 厚生労働大臣から中央最低賃金審議会へ諮問
6月下旬~8月上旬 中央最低賃金審議会で目安額を審議(6月26日、7月10日、17日、23日開催)
7月下旬~8月中 地方最低賃金審議会で地域別最低賃金改定額を審議
10月上旬頃 改定後の地域別最低賃金発効


なお、令和7年度は例年以上の大幅な引上げが行われたことなどから、中央最低賃金審議会の審議日程も例年とは異なる例外的なスケジュールで進められました。

 


3 2026年度地域別最低賃金改定の見通し

現時点で公表されている政府方針や経済指標、中央最低賃金審議会の審議資料などを総合的に考慮すると、2026年度の地域別最低賃金は引き続き引き上げられる可能性が高いものの、昨年度(66円)のような大幅な引上げとなる可能性は高くないものと考えられます。

また、地方最低賃金審議会においても、中央最低賃金審議会が示す目安額から大きく乖離した改定額となる可能性は低いものと考えられます。他方、地域間格差の解消の観点から、最高額に対する最低額の比率は引き続き上昇することが見込まれます。

その理由として、主に次の6点が挙げられます。


① 全国平均1,500円目標の達成時期が実質的に先送りされたこと

「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」では、「2020年代に全国平均1,500円」という目標は維持せず、遅くとも2030年代前半のできる限り早期に達成する方針へ見直されました。これにより、2020年代中の達成を前提とした場合よりも時間的な余裕が生まれています。

もちろん、政府が最低賃金の引上げ方針そのものを変更したわけではありませんが、目標達成時期の見直しは、本年度の目安額を検討する際の一つの判断材料になるものと考えられます。

② 消費者物価上昇率は昨年度より低下していること

昨年度の大幅な最低賃金引上げの背景には、物価上昇率の高まりがありました。
一方、本年度は消費者物価上昇率が昨年度と比較して低下しており、物価面からの引上げ圧力はやや弱まっています。

最低賃金法では、地域別最低賃金の改定に当たり、労働者の生計費を考慮することとされており、消費者物価の動向は中央最低賃金審議会における重要な判断材料の一つとなります。物価上昇率の低下だけで目安額が決まるわけではありませんが、昨年度ほどの強い引上げ要因とはなりにくいものと考えられます。

③ 春闘の賃上げ率は引き続き高い水準を維持していること

一方で、2026年春闘では昨年度に引き続き5%台の高い賃上げ率となっており、企業における賃上げの流れは継続しています。
最低賃金法では、地域別最低賃金を決定する際、労働者の賃金も考慮することとされています。

このため、春闘の結果は、本年度も最低賃金引上げを後押しする重要な要素になるものと考えられます。

④ 企業物価は依然として高い水準で推移していること

厚生労働省が中央最低賃金審議会へ提出した経済指標では、消費者物価上昇率が昨年度より低下している一方で、企業物価は依然として高い水準で推移しています。
また、中東情勢などを背景とした燃料価格の上昇や原材料価格の高止まりなどにより、多くの中小企業では依然としてコスト負担が大きい状況が続いています。
最低賃金は労働者の生活を支える重要な制度ですが、一方で最低賃金法では「通常の事業の賃金支払能力」も考慮事項とされています。
そのため、本年度の審議では、賃上げの必要性と中小企業等の支払能力とのバランスについても重要な論点となるものと考えられます。

 
⑤ 地方最低賃金審議会の審議の在り方

2026年6月に取りまとめられた中央最低賃金審議会全員協議会報告では、地方最低賃金審議会に対し、次のような考え方が示されています。

🚕近隣県との最低賃金額だけを比較して改定額を決定したり、最下位を避けることのみを目的として地域の実態と乖離した引上げを行うことは適切ではないこと
🚕目安額に大幅な上乗せを行う場合には、その判断理由を公益委員見解等において明らかにすべきこと
🚕前年度に例年以上の大幅な引上げを行った場合には、その影響等を公労使委員間で十分確認した上で当該年度の審議を行うべきこと

この全員協議会報告に法的拘束力はありません。
しかし、地方最低賃金審議会の事務局を担う都道府県労働局では、その趣旨を踏まえて審議会運営が行われるものと考えられます。

また、公益委員、労働者側委員及び使用者側委員の判断にも一定の影響を与えるものと考えられることから、本年度は昨年度のように目安額を大きく上回る改定額となる事例は減少する可能性があります。

もっとも、地域の経済情勢や地方公共団体からの要請など、個別事情によっては目安額を上回る結論となる可能性もあり、最終的には各地方最低賃金審議会の判断が尊重されることになります。

 
⑥ 地域間格差の是正は引き続き重要な課題

最低賃金制度は、地域ごとの物価や賃金水準、企業の支払能力などが異なることを踏まえ、全国一律ではなく都道府県ごとに地域別最低賃金を定める制度となっています。
また、中央最低賃金審議会が都道府県をA・B・Cの3つのランクに区分し、それぞれ異なる目安額を示しているのも、この考え方に基づいています。

一方で、令和7年度の最低賃金では、最も高い東京都と最も低い沖縄県との間に203円もの差が生じています。
このような地域間格差の拡大については、政府も重要な政策課題として位置付けています。

「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」では、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図るとされています。
また、昨年度の中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告においても、地域間格差への配慮の観点から、最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていくことが必要であるとの考え方が示されています。

このような政府方針や中央最低賃金審議会での議論を踏まえると、本年度も地域間格差の縮小は重要な論点の一つになるものと考えられます。
そのため、最低賃金額が比較的低い地域では、全国平均との差の縮小を意識した目安額や改定額となる可能性が高いものと考えられます。

 


4 今後の注目点

中央最低賃金審議会では、今後も目安額に関する審議が続く予定です。

目安答申が公表された際には、単に引上げ額だけを見るのではなく、次のような点にも注目することが重要です。

🚕昨年度との引上げ額・引上げ率の違い
🚕公益委員見解で示された判断理由
🚕地域間格差に対する考え方
🚕中小企業の賃金支払能力に関する評価
🚕地方最低賃金審議会に対するメッセージ

その後は各地方最低賃金審議会で具体的な改定額が審議されます。

今年度は全員協議会報告の内容も踏まえ、各地方最低賃金審議会が地域の実情をどのように評価し、中央最低賃金審議会の目安額との関係をどのように整理するのかも注目されます。

本サイトでも、中央最低賃金審議会の目安答申後、その内容や昨年度との違い、地方最低賃金審議会への影響などについて引き続き解説する予定です。

 


まとめ

2026年度の地域別最低賃金は、引き続き引き上げられる可能性が高いと考えられます。

一方で、政府による全国平均1,500円目標の達成時期の見直しや、消費者物価上昇率の低下、中央最低賃金審議会全員協議会報告の内容などを踏まえると、昨年度のような全国的な大幅引上げとなる可能性は高くないものと考えられます。

その一方で、地域間格差の是正は引き続き重要な政策課題となっていることから、最低賃金が比較的低い地域では、格差縮小を意識した改定が行われる可能性があります。
今後は中央最低賃金審議会の目安答申だけでなく、その判断理由や公益委員見解の内容にも注目することが重要です。

 


よくある質問(Q&A)

Q1 2026年度の最低賃金はいつ決まりますか。

中央最低賃金審議会で目安額が答申された後、各地方最低賃金審議会で具体的な改定額について審議が行われます。
その後、都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定し、例年10月上旬頃から順次発効します。

 
Q2 中央最低賃金審議会の目安額どおりに決まるのですか。

目安額には法的拘束力はありません。

しかし、多くの都道府県では目安額を基本として審議が行われるため、最終的な改定額は目安額と同額又はこれに近い金額となるケースが多く見られます。
近年は一部の地域で目安額を大きく上回る改定が行われましたが、本年度は中央最低賃金審議会全員協議会報告の内容も踏まえると、そのような事例は昨年度より少なくなる可能性があります。

 
Q3 都道府県によって最低賃金額が異なるのはなぜですか。

最低賃金法では、「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力」を考慮して地域別最低賃金を定めることとされています。
地域によって物価や賃金水準、企業の経営環境が異なるため、全国一律ではなく都道府県ごとに異なる最低賃金額が設定されています。

一方で、近年は地域間格差が拡大していることから、政府や中央最低賃金審議会では、地域ごとの実情を踏まえつつ、最高額と最低額の差の縮小も重要な課題として議論されています。


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■執筆者

執筆者:久富 康生(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会 常務理事・元長野労働局長)
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