【前編】令和8年度最低賃金改定の目安を解説|引上げ額・地方審議・発効日はどうなる?
【前編】令和8年度最低賃金改定の目安を解説|引上げ額・地方審議・発効日はどうなる?
令和8年度最低賃金改定の結論
令和8年度の最低賃金改定は、昨年度とは異なり、中央最低賃金審議会が示した目安額と同額、または若干上回る水準で決定される都道府県が多くなると見込まれます。
令和8年7月28日に示された地域別最低賃金額改定の目安は、Aランクが54円、Bランク及びCランクが56円の引上げとなりました。
今後、各都道府県の地方最低賃金審議会において、8月5日頃の取りまとめをメドとした目安額を軸とした金額審議が行われます。
令和8年度については、昨年度のような目安額を大きく上回る引上げは行われにくく、例年どおり10月初旬頃に発効する都道府県が多くなると考えられます。
本記事では、令和8年度最低賃金改定の目安額、地方最低賃金審議会での審議のポイント、最低賃金の発効日について解説します。
1 令和8年度最低賃金改定の目安額は?
令和8年7月28日、中央最低賃金審議会において、令和8年度地域別最低賃金額改定の目安が示されました。
各都道府県に適用される引上げ額の目安は、以下のとおりです。
| ランク | 引上げ額の目安 | 都道府県 |
| A | 54円 | 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 |
| B | 56円 | 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 |
| C | 56円 | 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 |
今年度の目安額は、前年を下回る引上げとなりましたが、全国加重平均では4.9%の引上げ率となっています。その背景事情等については、「2026年度最低賃金改定はどうなる?最新動向と今後のスケジュールを解説」で詳しく解説していますので、本稿では省略します。
近年の最低賃金の大幅な引上げは、物価上昇が続く中で、労働者の生活水準の確保や賃金改善に重要な役割を果たしてきました。一方で、最低賃金の引上げは、人件費の増加を通じて中小企業・小規模事業者の経営に大きな影響を与えます。
特に、価格転嫁が十分に進んでいない事業者や、タクシー業をはじめとする人件費が占める割合が高い労働集約型業種では、最低賃金引上げにいかに対応していくかが非常に重要な経営課題となっています。
2 地方最低賃金審議会では何が議論されるのか?
中央最低賃金審議会が示した目安額は、各都道府県の最低賃金額を直接決定するものではありません。
今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会において、目安額を軸としつつ、地域の経済状況、労働者の賃金水準、企業の支払能力などのいわゆる「最低賃金の法定三要素」を踏まえた金額審議が行われ、具体的な最低賃金額を示した答申が取りまとめられます。
その後、都道府県労働局長は、その答申を踏まえて最低賃金額を決定します。
今年度の地方審議において重要になると考えられるのが、令和8年6月に取りまとめられた中央最低賃金審議会全員協議会報告です。
この報告では、最低賃金額の決定に当たり、最低賃金法第9条第2項に基づく法定三要素である、
🚕地域における労働者の生計費
🚕労働者の賃金
🚕通常の事業の賃金支払能力
を総合的に考慮することの重要性が示されています。
また、
🚕近隣県との最低賃金額だけを比較して決定すること
🚕地域間順位の維持のみを目的として、地域の実態と乖離した引上げを行うこと
は適切ではないとされています。
さらに、目安額を大きく上回る引上げを行う場合には、その判断理由を公益委員見解等で明らかにすること、前年度に大幅な引上げを行った場合には、その影響を十分確認した上で審議することが求められています。
こうした点を踏まえると、令和8年度は、昨年度のような大幅な目安額超えの引上げは行われにくいと想定されます。
3 最低賃金はいつから変わる?発効日の見通し
最低賃金の発効方法には、法定発効方式と指定発効方式があります。法定発効方式とは、最低賃金の改正決定が官報に公示された日から30日を経過した日に発効する方式です。指定発効方式とは、改正決定の公示において、あらかじめ発効日を指定する方式です。
元来、指定発効方式は、法定発効よりも発効日を早める場合に用いられることが一般的でした。
しかし、昨年度は、目安額を10円以上上回る最低賃金額となった11県すべてで、大幅な引上げによる企業負担への配慮から、法定発効日より発効日を遅らせるため指定発効方式が採用されました。
令和8年度については、全員協議会報告において指定発効方式についても慎重な運用が求められていることから、前述したように大幅な引上げが想定されにくいことも踏まえると、多くの都道府県でこれまでと同様に法定発効方式が採用されることが見込まれます。
法定発効方式の場合、多くの地方最低賃金審議会では、10月1日頃の発効に間に合うスケジュール(答申要旨の公示から30日経過後を踏まえたスケジュール)で答申がなされています。
令和8年度のスケジュールでは、8月5日までに地方最低賃金審議会の答申を踏まえた改正決定が公示されれば、10月1日に発効することになります。
そのため、今年度は8月5日頃までに金額審議を終え、答申を行う地方最低賃金審議会が多くなることが見込まれます。
(以下後編に続く)
後編では、令和8年度の都道府県別最低賃金がどのようになるのか、東京都・神奈川県の見通し、Aランク・Bランク・Cランクごとの動向について、最低賃金制度の運用や過去の経緯を踏まえて解説します。
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参考資料
厚生労働省
「令和7年度地域別最低賃金の審議結果(最低賃金額一覧)」
※令和7年度の都道府県別最低賃金額、引上げ額及び発効日については、厚生労働省資料を参考にしています。
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■執筆者
執筆者:久富 康生(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会 常務理事・元長野労働局長)
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