第2回 「企業が選ぶ時代」から「求職者に選ばれる時代」へ ―売り手市場への転換で変わった採用活動とタクシー会社の求人戦略―
第2回 「企業が選ぶ時代」から「求職者に選ばれる時代」へ
―売り手市場への転換で変わった採用活動とタクシー会社の求人戦略―

結論:売り手市場では「企業が人を選ぶ」のではなく、「求職者から選ばれる企業」が採用できる時代です
第1回では、日本では労働力人口の構成変化や一人当たり労働時間の減少によって、社会全体で必要な労働時間総量が不足し、人手不足が構造的に生じていることをご紹介しました。
この労働時間総量の不足が続く中、企業は限られた人材を奪い合う状況となり、求職者の選択肢は大きく広がっています。
その結果、労働市場は「企業が求職者を選ぶ時代」から、「求職者が企業を選ぶ時代」へと大きく転換しました。
現在では、企業が求人を出すだけで応募が集まる時代ではありません。採用活動では、自社の魅力や働き方を積極的に発信し、「求職者から選ばれる企業」になることが人材確保の前提となっています。
1.企業が求職者を選ぶ「買い手市場」が長く続いた
バブル崩壊後から平成末期頃まで続いた買い手市場
厚生労働省「一般職業紹介状況」によれば、平成4年から平成25年までの約22年間のうち、19年間で有効求人倍率は1倍を下回っていました。いわゆる「失われた30年」と呼ばれる時代であり、就職氷河期やリーマン・ショック後の厳しい雇用情勢の中、企業が求職者を選ぶ「買い手市場」が長く続いていました。
当時は、中小企業でもハローワークへ求人を掲載すれば一定数の応募があり、その中から採用することができる環境でした。
「求人を出して待つ」という採用文化の定着
このような時代には、求職者は企業に選ばれるために経験や資格を身につけることが求められました。
一方で企業は、求人を掲載すれば応募が集まることが当たり前となり、自ら積極的に求職者へ働きかける必要性は高くありませんでした。
こうして、多くの企業で「求人を出して待つ」という採用スタイルが定着していきました。
2.売り手市場への転換で「選ぶ立場」は逆転した
平成26年以降、有効求人倍率は1倍を超え、日本の労働市場は売り手市場へ転換しました。コロナ禍で一時的に低下したものの、現在も売り手市場は続いています。完全失業率も低水準で推移しており、求職者は複数の企業や求人を比較しながら就職先を選べる環境となっています。
その一方で、企業は従来のように「求人を出せば応募が集まる」と考えることはできなくなりました。実際、厚生労働省「雇用動向調査」では、令和6年の入職経路に占めるハローワーク関連(職業安定所・インターネットサービス)の割合は約16%となっており、長期的には低下傾向にあるとともに、第1回にも述べたように労働力人口が高水準で推移している中で、ハローワークの新規求職申込件数は長期的に減少傾向にあるなど、ハローワークが占める役割は相対的に低下してきています。
具体的には、日本において長らく続いてきた買い手市場では、求人数が十分に確保できない状況が続いていたため、ハローワークは「雇用のセーフティネット」として積極的に企業へ求人開拓を行うことで求職者の就職を支援してきました。
その後、景気の回復を背景として企業の採用活動が活発化し、労働市場は買い手市場から売り手市場へ転換しました。これに伴い、企業は求人サイトや人材紹介サービスなど民間の採用手段を積極的に活用するようになったほか、ハローワークに頼らない様々なチャンネルでの採用・入職が進みました。こうした変化により、ハローワークだけに依存した採用活動では十分な応募を集めることが難しくなっています。
他方、求職者にとっては、就職のための様々なチャンネルが利用できるようになり、豊富な選択肢の中で、在職中に様々な企業や求人を比較しながら、じっくりと自分の希望に応じた就職先を見つけやすい環境が整いました。
こうして企業同士による人材獲得競争が激化し、現在の採用活動では、「企業が人を選ぶ」のではなく、「求職者から選ばれる企業」であることが採用の前提となっています。
3.スマートフォンの普及で求職者は企業を比較するようになった
売り手市場への転換と同時に、スマートフォンや求人サイトの普及も求職者の行動を大きく変えました。総務省「通信利用動向調査」によれば、スマートフォン利用率は平成22年の9.7%から令和5年には94.2%まで上昇しています。
現在の求職者は応募前に、
🚕勤務地
🚕勤務シフト
🚕想定年収・給与
🚕福利厚生
🚕職場の雰囲気
🚕教育・研修制度
🚕口コミや評判
などを比較し、自分に合った企業を選んでいます。
また、知りたい情報が見つからなければ、その企業について調べ続けるのではなく、別の求人へ移ることも珍しくありません。
企業は「比較される存在」であることを前提として、分かりやすい情報発信を行う必要があります。
4.情報発信力が採用競争力を左右する
求職者が企業を選ぶ時代では、採用活動そのものが情報発信の競争になっています。企業は、求職者が知りたい情報を分かりやすく整理し、求人ページや採用サイトで伝えることが重要です。
例えば、
🚕どのような働き方ができるのか
🚕給与・年収モデル
🚕未経験者向け教育・研修制度
🚕二種免許取得支援制度
🚕福利厚生
🚕職場の雰囲気
といった情報は、多くの求職者が重視しています。
一方で、
🚕勤務条件が分かりにくい
🚕収入モデルが掲載されていない
🚕写真や動画が少ない
🚕応募方法が分かりにくい
といった求人は、比較対象から外れてしまう可能性があります。現在は、「良い会社であること」だけでは十分ではありません。その魅力を求職者に分かりやすく伝えることが、採用成功の重要な条件となっています。
5.タクシー会社の採用活動で重要になる求人情報とは
中小企業が中心であるタクシー業界では、ハローワークを中心とした採用活動が長く続いてきたことから、「求人を出して待つ」という文化が今なお残っています。
しかし現在は、タクシードライバーとして働きたい人も複数のタクシー会社を比較しながら応募先を選ぶ時代です。
そのため、求人票や採用サイトでは、
🚕勤務シフトや多様な働き方
🚕歩合給を含めた収入モデル
🚕二種免許取得支援制度
🚕教育・研修体制
🚕写真・動画による職場紹介
🚕配車アプリ導入状況
🚕女性・高齢者・外国人材など多様な人材が働きやすい環境
などを積極的に発信することが重要になります。人手不足という構造的課題に対応するためには、「待ちの採用」から脱却し、「求職者から選ばれる採用」へと企業の採用活動を転換していくことが求められています。
6.全国タクシーJOBステーションが目指す「選ばれる採用」
全国タクシーJOBステーション(ジョブステ)は、このような労働市場の変化に対応するために開設されたタクシー専門求人サイトです。企業が「選ばれる立場」となった現在、単に求人情報を掲載するだけでは十分ではありません。求職者が複数のタクシー会社を比較し、自分に合った職場を選べるよう、勤務条件や収入、教育制度、職場環境などを分かりやすく発信することが重要です。
ジョブステは、企業と求職者をつなぐ情報発信の基盤として、タクシー会社の採用活動を支援するとともに、「求職者から選ばれる採用」の実現を後押ししていきます。
■ 関連情報
タクシードライバーの求人情報や全国のタクシー会社の募集状況は、全国タクシーJOBステーション(ジョブステ)でご覧いただけます。
▶ 全国タクシーJOBステーション(ジョブステ)の求人一覧はこちら
■ 資料出所
🚕厚生労働省「一般職業紹介状況」
🚕厚生労働省「雇用動向調査」
🚕総務省「通信利用動向調査」
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■ 執筆者
久富 康生
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会 常務理事(元長野労働局長)
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